旅に出たくなる本である。いまやアートの島として全国にその名を轟かせる直島だが、
その歩みは1980年代末に直島町と当時の福武書店、現在のベネッセが力を
併せて「直島文化村構想」を策定したことに始まる。そう認識していたのだがこの
本を読んでみるとこの島の「文化的な雰囲気」との縁は遠く平安末期の崇徳上皇
の時代にまで遡ることを知った。近世は瀬戸内海から日本全国を巡る廻船業を
経済的基盤として歌舞伎や人形浄瑠璃が盛んに上演された。また黒や焦げ茶の
外壁が特徴的な民家などにも洗練された文化の名残が息づいている。

もちろんこの本では現在の目玉であるアートにも多くの頁を割いており「旅立つ
前の一冊」としてぜひお薦めしたい。

直島へは高松港からフェリー50分、高速船25分。高松までは
LCCで唯一ジェットスターが成田から運行している。JALとANAも就航中。

『Naoshima Insight Guide』直島を知る50のキーワード
講談社2013年3月刊