ここは沖縄本島のほかの観光地とはどこかが違う。すぐそばにいまや本島の代表的な観光スポットとなった美ら海水族館があるのに、その喧噪はここまで届かない。フクギという名の、葉の厚い常緑樹が密度濃く並んだ緑のトンネルは南国の強烈な日差しを柔らかな木漏れ日に変えてくれる。砂地の路を踏みしめて歩いていると目の前を色鮮やかな蝶が飛び去ってゆく。たとえ人影は見えなくても手つかずの自然ではなく、よく手入れされた林であることが何となくわかるのだった。まだ訪れる人が少ないので地元の人たちの落ちついた生活がある。備瀬はそんな場所だ。ここだけを目的に那覇から長駆したとしてもそれは報いられるだろう。