パリの三大美術館というと、1にルーブル、2にオルセー、3に
ポンピドゥーセンターということになるでしょうか。そのうちふたつ
の美術館が収蔵する作品の展覧会がJAL(日本航空)の協力により
現在東京で同時に開催されています。この三つの美術館の絵画部門は
いちおう制作年代によって区分されているのをご存じですか?
ルーブル美術館は13世紀から1848年まで、オルセー美術館は1848
年から1914年まで、ポンピドーはそれより後の、いわゆる近代美術を
それぞれカバーしていることになっています。1848年が重なっている
のは気にしないで下さい。今回計らずも東京で美を競う形になったのは
六本木の国立新美術館で開催中の「ルノワール展」(8月22日まで)と
上野の東京都美術館で行われている「ポンピドゥー・センター傑作展
(9月22日まで)です。美術ファンならせっかくのこのチャンス、
両方見るしかありません。

★ルノワール展
筆者は、たまたま訪れた南フランス カーニュ・シュル・メールにある
コレットの丘のアトリエで、ルノワールに対してそれまで抱いていた印象
とは程遠い、晩年の画家の苦悩を知って以後この人の絵を見る目が変わった
という個人的な経験があります。明るい印象を受けることの多いルノワール
の絵ですが、画家の生活史を知ればまた違った見方ができるかも知れません。

今回の展覧会はオルセー美術館とオランジュリー美術館から100点を超える
絵画、彫刻、デッサン、パステル、貴重な資料類などが出展されており、
全体を10章に分けて肖像、風俗、風景、花、こども、裸婦などルノワール
得意の主題で紹介されています。そして本展の目玉は最高傑作と言われる
『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』で、日本では初めての展示となります。
他に『田舎のダンス』『都会のダンス』『ピアノを弾く少女たち』『浴女たち』など、
見逃せない作品ばかりです。

★ポンピドゥーセンター傑作展
一方ポンピドゥーセンターの正式名称は国立美術文化センターで、美術と
してはモダンアートの領域を標榜しています。ですから(?)ルーブルや
オルセーに比べると親しみがわきにくい美術館かも知れませんね。ちなみに
同センターのパイプやガラスがむき出しの特異な外観をデザインしたのは
関西空港ターミナルビルをも設計したレンゾ・ピアノ氏です。
本展ではピカソをはじめマティス、シャガール、デュシャン、
ジャコメッティやデュフィなどおなじみのアーティストたちの
作品が多く展示されています。また展示方法も1906年から
1977年までを1年ごとに1作家の作品を展示する、という
ユニークな方法が採用されています。例えば劈頭を飾る
1906年はデュフィの『旗で飾られた通り』。革命記念日に湧く
7月14日のパリを活写した作品として知られています。
先にあげた巨匠たちだけではなく、あまり日本では知られて
いない画家の作品も含まれていて、本展を通覧すれば20世紀
フランス美術を一望することになります。モダンアートが不得意
なあなたも是非訪れてみてください!