オリンピックも高校野球も終わり、静かな夏の終わりを迎える季節になり
ました。まだ暑い日が多いけど、どこかに秋の気配を感じるこの季節は
アート観賞にピッタリだと思います。このコラムではそれを旅の主目的
とするのではなく、予定外にできた旅のスキマのような時間を使って
アートにふれるショートトリップをおすすめして来ました。首都圏でそんな
時間ができたら、ルネッサンス巨匠展やレンブラントはいかがでしょう。

六本木の新国立美術館で10月10まで開催されている「アカデミア美術館展」は
日本とイタリアが国交を
開いてから今年で150周年となることを記念して企画された展覧会です。
イタリアルネサンスの絵画と言えばどうしてもフィレンツェが念頭に浮かび
ますがヴェネチアにも素晴らしい作品が数多く残されています。今回のメダ
マはヴェネチア絵画を代表する巨匠ティツィアーノ晩年の大作(一部に失敗
作との評価も!?)と言われる『受胎告知』です。この作品はアカデミア美術館
収蔵ではなく、サン・サルヴァドール聖堂という教会の側廊祭壇を飾る大作
が特別出品されたものだそうです。でもこういう大作はどうも、とおっしゃる
方におすすめしたいのが同じ画家の『アルベルティーニの聖母子像』です。
モデルとしての聖母マリアが『受胎告知』とこの聖母子像でどう描き分け
られているのか、その異質な造形美をぜひ見比べてみて下さい。このほか
同展ではベッリーニの『赤い智天使の聖母子像』、カルパッチョの『聖母マリア
のエリサベト訪問』、ティントレットの『聖母被昇天』、ヴェロネーゼの
『レバントの海戦の寓意』などが出展されています。

一方9月4日まで、と残り期間は短いのですが、横浜のそごう美術館で
開催されているのが「レンブラント リ クリエイト」。17世紀オランダを
代表する光と影の巨匠レンブラントの作品200点が横浜で展覧されています!
驚きのこの企画、「リ・クリエイト」とされている通り、複製画の展覧会
なのですが、ただの複製画ではありません。レンブラント・リサーチ・プロジェクト
という研究団体が最新のデジタル技術を駆使して17世紀に制作されたオリジナルを
忠実に再現した複製画なのです。当時の色調やサイズを徹底的に検証して
経年劣化を修復するだけではなく、盗難で行方不明中の作品や、『夜警』のように
一部が切断されている作品もオリジナルの姿を見ることができるようになっています。
もしこの200点のオリジナルを全て見ようとすれば、なんと世界18カ国を
旅しなければいけないそうです。徳島の大塚美術館と同様の試みと言えますが
これも美術鑑賞のひとつの方法だと思います。東京・横浜にはやっぱり
羽田が便利です。ANA,JALでアートニッチ旅へ!